33歳独女が一人で南の離島に旅してめちゃくちゃ怒られた話

心の浜

昔、私が、一人旅したい!って言ったら怪訝な顔をした男がいた。

「え?一人で行くの?強くなりすぎちまう」

一人旅できるの、かっこいい。

友達できそう。

そう思ってたのに、ラインの反応はそっけない。

私は彼をひそかにいいなと思っていた。だから、「え!いいじゃん!すごい!」みたいな反応を期待していたのに、

彼の中での私の株を上げようとした表明だったが、全然思うようにいかなかった。

そっか、そうだよね、そういう女は嫌いなんだな。と、旅への気持ちは急速にしぼむ。

この記事を書いた人
夏目さん

2019年と2023年生まれの二人の女児の母で愛されてる妻。一つ下の夫とマンションの3階で楽しく暮らしている。
フラれたミドサーから潜在意識で1年で結婚を叶えた人。夫は私専属の執事に進化。美容&教育業界に15年の経験から、美しさを作るのは内面と確信。女性がちょっと元気になるような記事を書いてるよ。焼き肉は塩派。

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1.33歳女独身。彼氏もいない夏

2016年、夏。

私はひとり、沖縄の離島へ向かうフェリーに、搭乗していた。

昔、私に「強くなりすぎちまう」といった彼とは、もう連絡を取っていない。

なのに私は、彼からもらった言葉を大切にとっていて、

  • 男をうまく頼れる女がかわいい
  • できないことがある弱い女がかわいい
  • かわいい
  • とにかくかわいげ
  • かわいい…

かわいい女になりたくて、「かわいい女になる方法」なんて本を買ったりしていたらしい。つらい。

かわいい女になりてーよ。

仕事で思うようにいかないことがあったら、ホロホロと涙をこぼす女に。

昔、酔っぱらった顧客に怒鳴られても、能面で対応してましたからね。私。

でもさー、かわいくないんでしょ。そんな女は。

私はやつのことを思い出していた。

もう私だって、あんたに興味ないけど。

フェリーに乗りながら感じる海の波は、足元をくすぐるような優しいものじゃない。

今は海が、私の大地で、進めど進めど、ずっと震度6状態。

がっくんがっくん揺さぶられる。

2.おばあとの出会い

離島につくと、ゲストハウスの人がお迎えに来てくれていた。

港に5,6台の軽のワゴン車が停車している。

みんなそれぞれ、宿の人で、フェリーの着時間に合わせて迎えに来た様子。

宿名の書いた小さい段ボールを手にもって、看板のようにして振ってる。

さんさんと日光が降り注ぐ。私は帽子を深くかぶりなおす。

目を凝らさないと、なんて書いてあるか見えない。

私は一人旅だから、宿の人を自分で見つけなきゃ。

レゲエカラーのタンクトップを着て、長い前髪を頭の上で一つに結んだ、

30くらいの痩せた男性が、こっちに手招きしている。

日に焼けていてひげは生えっぱなし。絶対会社員じゃない。

あの人だけは嫌だな。絶対気が合わなそう。

私の前を歩いていた男の人二人組が、レゲエさんに向かっていった。

わたしは急いで、手元のにメモした二泊お世話になる宿の名を確認する。

で、レゲエさんの手にある、段ボールに書いてある宿名を見る。

あの人だ。

諦めて、きっぱりとレゲエさんに向かっていった。無表情で。

迎えの車の中で、私は一人、景色を見る。会話には参加できないけど、なんとなく、

つばの広い帽子は、とった。狭いし。

お客は、私と、男性二人組、レゲエさんが運転手、車の中は計四人。

男性二人組は何回も来る常連さんらしく、レゲエさんと、久しぶりー!なんて話をしてる。

狭い社内、時々、レゲエさんから話を振られた。

ほんの五分くらいで宿についた。相部屋の宿。個室なはい。

宿主のおばあが、チラッと私を見た。この人がおばあか。

おばあは運転ができないので、レゲエさんは宿泊者の迎えに行っているらしい。

長期で滞在してて、部屋の掃除機もかけていた。そして、レゲエさんも宿泊客らしい。え?

東京に、奥さんと一歳の子供がいるとか。家庭大丈夫?

荷物を置いて、ぼんやりしていると、昨日から泊っているという女の子たちが部屋に入ってきた。

すれ違うように出て、ロビー兼リビングで壁に貼ってある写真を見ていると、

もうすぐ、夕暮れの時間だって。

見てくる~と、歩いて5分の、海岸へ。一人で向かった。

3.男には気を付けなさい

一人で行動するの、平気。

仕事中、狭い休憩室で、誰かのいう悪口に耐えられなくてそっと出て、一人でお昼を食べることが多かったから。

夕日が落ちるのを眺めつつ、一生懸命スマホをかざしていると、写真撮りましょうか?と話しかけられた。

大阪から来たという、三人組の男性だった。30歳くらいに見えた。

旅先で出会って早々年齢を確かめるの、とってもつまらないなと感じるので、いつも聞かない。

年齢のカテゴリに振り分けちゃうより、どんな人なのか、先入観無しで知りたい。

食事なしの宿だったので、三人組の男性とそのまま島の居酒屋で、ご飯を食べて戻ることにした。

海岸も、居酒屋も、宿も、全部が徒歩圏内。

内心ほっとしていた。ご飯食べる場所探さなきゃと思ってたから。

同じカウンターに座ってた、地元の人とも話ができた。三人組は消防士らしい。

私、お酒は飲めないので、一応生ビールを恰好だけ頼んで口をつけたけど、

全然酔っぱらってない。

異国のようだった。遠くまで来たんだな。

宿に戻る前、海岸で星を見た。

光がないから、流れ星がすごいの。5分くらいで10個は見たな。

スマホ見ると、21時。

知らない番号から着信。

調べると、宿だった。

「あんた今、どこにおるの???!!」

おばあが怒鳴ってた

「か、海岸…ですけど…」

「誰と?!!」

「さっき知り合った人…」

「島の人?旅行客?どこに泊まってる人??どこから来た人???」

めっちゃ怒ってる。怖い。

てかなんで怒られるの?素泊まりだから食事は外やん?どこ行くか、その都度報告要るっけ?

素敵なうっとりは一気に打ち破られ、とぼとぼと宿に向かう。

最初は「無視しとけばいいじゃん?」なんて笑ってた消防士の彼らも、「戻るか」と送ってくれることに。

強いということは、どういうことだろう。

一人旅ができたら、強いの?

強いんじゃなくて、好奇心が強いだけ。

強い女は需要ないの?

それとも、人に怒られても動じないこと?

なら、私は全然強くなんかない。

港で買ったかき氷。ほんとうにこんな色の海だった

宿に戻ると、

何回も電話かけたが繋がらなかった、心配していたと怒られた。

「男には気をつけなよ。相手が島の人でも。」

「島の人でも?」

「そう。男だから。」

すぐシャワー浴びて、寝床に丸まった。

リビングでみんなが談笑する声が聞こえてたけど、

とてもそんな気分になれなくて、タオルケットから顔だけ出してた。

同じ部屋の、一人旅の女の子が、0時を過ぎて戻ってきた。

おばあに怒られなかった?大丈夫だった?と聞くと、え?全然…と。

いつも、なんか目立って怒られる私。職場でもそうである

30過ぎて、離島まで来て人に怒られるって、そんなにない。

あんなに他人に怒られたこと、あったかなぁ。

男には気を付けなさいって。

わかってるよ。

男には気を付けなさいだって。ふーんだ。

浮かれた旅行客に見えたんだろうな。

わかってない。

そんなに心配かけたのか。

あーあ。

お母さんか。

あーーーあぁ。

次の日の朝、布団から出る。今日の予定は決めてない。

なんだかおばあと顔を合わせにくかったけど、

ずっと部屋にいたらいけないよなと思って、起きだす。

部屋に一人。

もう太陽が高く昇っていた。日差しが強い。

一歩部屋から出ると、なんか見覚えのある濃いブルーの布がまるまって落ちてる。私のパンツだった。

昨日シャワーに出たときに落としたんだ。

一瞬で拾い、おばあのいるリビングに入り、隅っこに小さく座って、

壁に貼られた地図に、ぼんやりと目をやっていた。

他の宿泊者はみんな、出かけたらしい。

おばあが、私に話しかける。

「買い物行くけど、あんたも来る?」

うん!待ってた。

おばあの少し後ろをついていく。木々の葉の色が濃い。

空の色も、濃い。

個人商店について、おばあは、店のおばちゃんと立ち話を始めた。

「好きなもの、なんか買ったるでもっといで」

普段、ジュースはあまり飲まないけど、南の島っぽいものをと思い、目についたオレンジーナをケースから出して、

おばあのかごにそっと入れた。

おばあは女子には厳しいからな。と、レゲエさんは言っていた。

あと、カップルにも厳しいらしい。あの二人、手をつないでた!って怒ってた。そうそう。

自称パイロットの常連さんも笑っていた。

ちなみに、若い男子には優しい。

あんたおなかすいてる?と声をかけ、ご飯をふるまっちゃうらしい。

レゲエさんは私のファンになったと言っていた。

東京に置いてきた奥さんと1歳の子供、大丈夫?

帰る日、シャワーを借りたら、窓からおばあの手だけがにゅっと出てきた。

「シャワー代300円頂戴。」

ちょっと笑った。

最後、リビングでみんなといたら、おばあに一度だけ話しかけられた。

「あんた明日は、どこに泊まるの」

「石垣島に戻って、インターコンチネンタルに泊まります」

「へ!そんないいとこに泊まるんじゃ、うちなんて狭くて悪かったね~!」

「全然そんなこと思ってないよ!」

まったく、おばあは。

二人で商店に行ったこと、

オレンジーナを買ってもらったこと、

私は今日まで、誰にも言わなかった。

多分これからも、きっと。

港に向かう帰りの車に乗り込んだ時、

おばあは、にこにこするでもなく、手を振るでもなく、こっちを見ていた。

また来てね~なんて言われなかったけど、

また来るね~ってなんとなく言った。

おばあが元気でいてくれるといいな。

ありがとう。

車が見えなくなるまで、見送ってくれた…なんてこともなく、

おばあはさっさと宿に戻っていった。いいんだ。暑いしね。

この旅のことを、

おばあのことを、

私はなんとなく、忘れないだろうなと思う。

もちろん、別の出会いもちゃんと持ち帰ってきたが、

それはまた、別の話。

宇宙の真ん中に放り出されたような空だった

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夏目さん

2019年と2023年生まれの二人の女児の母で愛されてる妻。一つ下の夫とマンションの3階で楽しく暮らしている。
フラれたミドサーから潜在意識で1年で結婚を叶えた人。夫は私専属の執事に進化。美容&教育業界に15年の経験から、美しさを作るのは内面と確信。女性がちょっと元気になるような記事を書いてるよ。焼き肉は塩派。

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